ウェブのご担当者なら、一度は上司や社長から言われた経験があるのではないでしょうか。
「はい、できます」とは簡単に答えられないのが、現場の担当者であるならば感じていることでしょう。でも「できません」とも言いにくい。AI はとても便利で、できてしまうことも事実だからです。
更新したいタイミングで自分たちで直せること、ベンダーへの費用を抑えられることも、内製化の大きなメリットです。例えば、
- レイアウトを少し変えたい
- 使わなくなった部分を削除したい
- 新しいページを追加したい
などの場合は、ページの HTML や CSS を AI に渡して「ここをこういうレイアウトにしたい」と伝えれば、数分でできあがります。もし指示の仕方が分からなくても、AI が丁寧に教えてくれるでしょう。
このように、「内製化」は「作ること」までは AI でできます。ただ、「内製化」には、「作ること」と「運用できること」2 つの前提条件があります。
「運用できる」とは?
運用できるというのは、作ったあとに何かあったとき、自分たちで対応できる状態のことです。
AI が答えてくれるのは「どう作るか」です。答えてくれないのは「これを自分たちで運用できるのか」のほうです。試しに、この 3 つを質問してみましょう。
- このサイトのこの部分は、社内で触っていい範囲なのか
- これが壊れたとき、社内の誰が直せるか
- 半年後に、担当者が変わっても、サイトは問題なく運用できるか
AI には明確な答えは出せないと思います。
これは AI の性能の問題ではありません。社内に誰がいるのか。誰がどこまで担当しているのか。そのページが止まると、会社に何が起きるのか。「作る」の外側にある「運用」の事情までは、AI は知らされていないからです。
そして内製化の判断には、この「運用」の範囲をしっかりと見極める必要があります。
「運用」の範囲は何で判断できるか
内製化していい範囲は「壊れたときにどうなるか」をイメージすることで絞ることができます。サイト内の各ページを以下に当てはめて、確かめてみましょう。代表的なものは 4 つです。
1. 壊れたとき、元に戻せるか
公開前の状態に戻す手順が分かっていて、実際に戻したことがあるかを確認します。「バックアップをとれること」だけでは不十分で、「もとに戻せること」が前提となります。
2. 壊れたとき、気づけるか
ページを調整したときに、レイアウトが崩れている、不具合やエラーが発生しているなど、何かが壊れていることに気づけるかです。ただ、目で見て分かるものばかりではありません。ここは重要なため、後ほど例と一緒にご紹介します。
3. 壊れたとき、誰が直すかまで決まっているか
誰が担当するのか、いつなら動けるのかを把握します。「トラブルが発生したときに、ベンダーさんに連絡する」で止まっている場合、内製化した場合をイメージし、夜間や連休中は誰がどうするかまで決まっているかを確認します。
4. そこが止まると、何が止まるか
影響の範囲を把握します。例えば、会社概要のページと、問い合わせフォームと、決済のページでは、止まったときの重さが違います。同じ「1 ページ」でも、全体に与える影響や、重要度によって、優先順位の扱いを分けます。
この 4 つは、「運用」に大きく関わる部分で、専門知識がなくても自社で判定できます。判定してみて、答えられない項目が多いページは、いまは触らないほうがいい、という判断ができます。
「2. 壊れたとき、気づけるか」の事例紹介
ここで、ひとつ事例をご紹介します。あるサイトの改修をご依頼いただいたときの話です。
そのサイトでは、文言の修正やリンク先の変更といった簡単な更新は内製化、難しい範囲はベンダーに任せるなど、見極めもうまくいっていたと言えます。
ある商品の取り扱いが終了となり、商品の詳細ページへたどりつくための「表示ボタン」を削除する必要がありました。ただボタンを削除するだけの単純な作業だったため、ベンダーに依頼するほどではないと判断、社内で作業をされたそうです。
実はこのボタン、大きな落とし穴がありました。ページの構成上、PC 表示とスマートフォン表示とで分けて記述があり、両方のボタンを削除する必要があったのです。
ページ自体は削除をしておらず、PC 表示のボタンのみを削除しただけだったので、スマートフォンからはその商品の詳細ページへたどり着けてしまう状態でした。
導線ボタンを消しただけの単純作業であること、他のページでも同様の作業をした経験があったことから、スマートフォン表示の確認までは至らなかったようでした。
そして、見た目には何も壊れていません。スマートフォンでもページは普通に表示され、エラーも出ません。だから、その後も誰も気づきませんでした。
この問題が発覚したのは約半年後、私たちへサイトの改修をご依頼いただいたときでした。最新のデータをまとめてお預かりし、改修のために記述を確認していたところ、スマートフォンにのみ残っている記述に気づきました。
知らないことは、できないで当たり前
この事例は、担当者の注意不足で片づけられる話ではありません。
もちろん、運用のルールとして「スマートフォン表示でもチェックする」「リンクさせたくないページは、アクセスできないようにしておく」などを徹底していれば、防げていたかもしれません。
ただ、ボタンをひとつ削除するだけの作業に、このような見落としが起きるとは思いもしなかったのではないでしょうか。
PC で確認して直ったと判断するのは、普通の手順です。そもそも、スマートフォン用に別の記述があることを知らなければ、確認のしようがありません。
サイトを作った会社と、日々更新する人が違うとき、このような細かい情報は引き継がれないことがあります。あるいは、現場の担当者と制作会社の担当者の間では分かっていても、どちらかが外れたときに引き継がれないまま終わる、ということもよくあります。
内製化できるかどうかは、担当者の能力の問題ではありません。どこがどう作られているか。その情報が引き継がれているかどうかの問題です。
AI に任せても、同じことが起きます
では、「作ること」が得意な AI に、この作業を任せていたらどうなっていたでしょうか。
AI に「このボタンを削除して」と頼むと、渡したコードの範囲で作業します。スマートフォン用に同じボタンがあることまでは分かりません。そして「指定の箇所を削除しました」と答えます。
構造を知らないまま作業するという点で、AI は構造を渡されていない担当者と同じ状態にあります。そして、どこも壊れません。頼まれたことは、正しく作業をするからです。
正しく作業されていて、何も壊れていないのに、直っていない。事例と同じことが、AI に任せても起こります。
「内製化は、できます!」と答えられるために
内製化には「作ること」と「運用できること」、2 つの前提条件がありました。
「作ること」は、AI がかなりの部分を引き受けてくれます。冒頭で書いたとおりです。
「運用できること」は、範囲を決めることで成り立ちます。全部を自分たちで持つ必要はありません。何かあったときに気づけて、元に戻せて、誰が直すかが決まっている。その範囲の中でなら、内製化は進められます。
そこまで進められるならば、「AI でなんでもできるんだから、内製化できないの?」と言われたときに、「できます。まずは、どこまでを内製化できるか、いまのサイトの状態を確認させてください」と答えられるはずです。
ただ、その状態は、画面を見ているだけでは分かりません。今回の事例でも、ボタンは正しく消えているように見えていました。気づけたのは、中の記述を調査したからです。
私たちは、その記述を読んで、どこまでなら触っても大丈夫かを切り分ける仕事をしています。内製化をめざして、いまのサイトがどういう状態なのかを確かめるところから、ご一緒できます。

